概要
2024年における日本の主要自動車メーカー(トヨタ、ホンダ、日産、SUBARU、マツダ、三菱)の米国での現地生産台数と日本から米国への輸出台数を比較しました。それぞれのメーカーの台数(可能な限り正確な値)、出所(統計データや報道)、および**前年からの増減(前年比)**をまとめています。また、各社の戦略や背景として、為替レートや貿易政策、サプライチェーンの動向など全体的な傾向についても分析します。最後に、表形式で各社の比較を提示します。
メーカー別の現地生産台数と対米輸出台数
トヨタ自動車 (Toyota)
- 米国現地生産台数(2024年): 約127万台(1,270,000台)jp.reuters.com。トヨタはケンタッキー州やテキサス州など複数の米国工場でカムリ、RAV4、ピックアップトラック等を生産しており、2024年は前年比で増加傾向にありました(ハイブリッド車需要に対応した生産増強などが背景)。
- 日本から米国への輸出台数(2024年): 約53万台(530,000台)jp.reuters.com。これはトヨタが米国で販売した約233万台の約23%に相当し、前年より若干減少したとみられます。輸出車には主に日本生産のレクサス車種やランドクルーザー等が含まれます。トヨタは依然として一定量を日本から供給していますが、現地生産比率は約5割と、輸出依存度は日系大手の中では中程度ですjp.reuters.comtoyokeizai.net。
本田技研工業 (Honda)
- 米国現地生産台数(2024年): 1,004,749台(約100.5万台)global.honda。ホンダはオハイオ州やアラバマ州などの工場で主力モデル(CR-V、シビック、アコードなど)を生産しており、2024年の米国生産は前年比1.3%減(98.7%)となりましたglobal.honda。それでも約100万台超を現地生産しており、米国販売の大半を自給しています。
- 日本から米国への輸出台数(2024年): 5,379台global.hondaと極めて少なく、ホンダの米国販売約142万台に対し輸入比率はわずか数パーセントに留まります(ホンダの米国販売に占める輸入車比率は約4割ですが、その多くは日本以外の地域生産分も含む)global.hondatoyokeizai.net。前年比では約13.1%増ですがglobal.honda、絶対数が小さいため、ホンダは事実上米国向けを現地生産で賄う戦略となっています。
日産自動車 (Nissan)
- 米国現地生産台数(2024年): 524,919台guide.jsae.or.jp(約52.5万台)。米国テネシー州スマーナ工場やミシシッピ州キャントン工場でアルティマ、ローグ(エクストレイル)等を生産しています。2024年は米国生産が前年から13.3%減少し、2023年の605,241台から減産となりましたguide.jsae.or.jp。これはモデルサイクルや需要動向によるものです。
- 日本から米国への輸出台数(2024年): 約19万台jp.reuters.com(北米向け合計は191,922台で前年比-12.3%guide.jsae.or.jp)。日産は米国販売約92万台の約半数を現地生産で賄い、残りの約半数を日本からの輸出とメキシコ工場での生産で補っていますjp.reuters.com。日本から北米市場への輸出約19万台(前年比減少)の大部分が米国向けでありjp.reuters.com、輸出比率はトヨタと並び約5割ですtoyokeizai.net。米国向け輸出減少の一因には、モデルの現地生産化や販売低迷車種の減産が考えられます。
SUBARU(スバル)
- 米国現地生産台数(2024年): 365,963台subaru.co.jp(約36.6万台)。SUBARUは米国インディアナ州の工場で「アウトバック」「アセント」などSUVやセダンを生産しており、2024年の海外生産台数は前年比**+4.3%増加**しましたsubaru.co.jp。これは生産能力の向上や需要増加(29か月連続販売増subaru.co.jpnote.com)に対応した結果です。
- 日本から米国への輸出台数(2024年): 約30万台(推定)。スバルの2024年米国販売台数は667,725台と過去最高水準でnote.com、その約半数が米国現地生産車、残り半数弱(約30万台強)が日本からの輸入車でした。スバルの日本からの総輸出台数は481,765台(前年比-5.4%)でありsubaru.co.jp、米国は最大の輸出仕向け先です。この結果、スバルの米国販売に占める日本からの輸出車比率は約50%と、日系各社の中でも高い部類に入ります(トヨタや日産と同水準)toyokeizai.net。もっとも、2024年は在庫回復もあり輸出はやや減少しました。
マツダ (Mazda)
- 米国現地生産台数(2024年): 約11.3万台(113,000台)newsroom.mazda.com。マツダは2021年に稼働したアラバマ州の新工場(トヨタとの合弁)でSUV「CX-50」を生産しており、2024年は生産台数が113,186台で前年比**+56.5%**と大幅増となりましたnewsroom.mazda.com。これは新工場の本格稼働による増産です。ただし、マツダ全体として米国販売42万台のうち現地生産は約2割に過ぎずjp.reuters.com、規模は他メーカーに比べ小さいです。
- 日本から米国への輸出台数(2024年): 280,297台(北米向け、日本からの輸出)newsroom.mazda.com。マツダは米国販売の大半を日本とメキシコからの輸出で賄っており、日本から北米への輸出は前年比5.0%減でしたnewsroom.mazda.com。特に米国販売車の約8割が日本・メキシコからの輸入となっておりchugoku-np.co.jp、日系メーカーの中でも輸出依存度が最も高いです。約42万台の米国販売のうち日本から約23万台を輸出したとの報道もありjp.reuters.com、為替の追い風を受けつつも、関税リスクやコスト高を意識した生産戦略が課題となっています。
三菱自動車 (Mitsubishi Motors)
- 米国現地生産台数(2024年): 0台。三菱自は2015年に米国イリノイ州の工場を閉鎖して以降、米国に乗用車の生産拠点を持っていません。そのため2024年も現地生産はなく、米国で販売する全車を輸入に依存しています。
- 日本から米国への輸出台数(2024年): 109,107台(北米向け、日本からの輸出)mitsubishi-motors.com。三菱の2024年米国販売台数は109,843台(前年比+25.8%で近年最高)と報じられておりbest-selling-cars.com、その大部分は日本からの完成車輸出でまかなわれました。日本から北米(主に米国)への輸出台数109,107台は前年比7.7%減でしたmitsubishi-motors.com。主力のSUV「アウトランダー」などを岡崎製作所(日本)から送り、他に小型車「ミラージュ」はタイ工場生産を輸入していますが、日本からの輸出としてはカウントされません。三菱は日系他社に比べ米国市場規模が小さいものの、全量を輸出に依存している点が特徴です。
比較表(2024年 米国生産台数・対米輸出台数)
以下の表に、各メーカーの2024年における米国現地生産台数と日本から米国への輸出台数をまとめます(台数の単位:台)。併せて前年からの増減率(前年比)を示します。
メーカー | 米国現地生産台数 (2024年) | 前年比 | 日本から米国への輸出台数 (2024年) | 前年比 |
---|---|---|---|---|
トヨタ | 約1,270,000jp.reuters.com | (+数%)* | 約530,000jp.reuters.com | (-数%)* |
ホンダ | 1,004,749global.honda | 98.7%(▼1.3%)global.honda | 5,379global.honda | 113.1%(▲13.1%)global.honda |
日産 | 524,919guide.jsae.or.jp | 86.7%(▼13.3%)guide.jsae.or.jp | 約190,000jp.reuters.com | 87.7%(▼12.3%)guide.jsae.or.jp |
SUBARU | 365,963subaru.co.jp | 104.3%(▲4.3%)subaru.co.jp | 約300,000 (推定)** | 約95%(▼5%)(推定)** |
マツダ | 約113,000newsroom.mazda.com | 156.5%(▲56.5%)newsroom.mazda.com | 280,297newsroom.mazda.com | 95.0%(▼5.0%)newsroom.mazda.com |
三菱自 | 0 | ― | 109,107mitsubishi-motors.com | 92.3%(▼7.7%)mitsubishi-motors.com |
注釈: 上記の「約」は端数を四捨五入した概数です。トヨタの前年比は公式発表がないため推定値、日産の輸出台数は北米向け合計(米国+カナダ)
guide.jsae.or.jp、SUBARUの輸出台数は米国販売実績との差分から推定(公式には地域別内訳非公表)。マツダと三菱の輸出台数の前年比は北米向け合計に対する値。前年比の▲▼は増減(▲増加、▼減少)を示す。
全体傾向と背景の分析
2024年は日系自動車メーカー各社が米国市場で販売を伸ばした年であり(主要6社合計で前年比+6.2%の約588万台
aba-j.or.jp)、それに伴い現地生産も総じて増加基調にありました。特にホンダやトヨタは米国生産比率が高く、需要増に応じて現地工場の稼働を最大化することで供給を確保しました。一方でマツダやSUBARU、日産のように生産能力や車種ラインナップの都合で一定割合を日本からの輸出に頼るメーカーもありました。三菱のように全量輸出のケースは例外的ですが、各社とも米国関税政策リスクを念頭に生産の現地化を進める傾向が見られます。
為替の影響: 2024年は円安傾向(1ドル=140~150円前後)が続き、日本からの輸出採算には追い風となりました。円安により日本から米国への輸出車は利益率が上がるため、トヨタやマツダなどは輸出台数をある程度維持できました。しかし同時に、為替変動リスクを低減するため現地生産化を進める戦略も各社で継続しています。例えばトヨタは北米での追加投資を発表し、テキサス州工場への増産投資などを実施しています
政策要因: 2024年末から2025年にかけて、米国の通商政策(いわゆる「トランプ関税」構想)が再浮上し、自動車関税引き上げの懸念が高まりました
jp.reuters.com。トランプ前大統領が提唱する乗用車関税25%への引き上げは、日本メーカーにとって大きな打撃となり得るため、各社は輸入関税リスクの軽減を図っています。具体的には、メキシコ生産拠点の活用が顕著で、トヨタはタコマをメキシコで約24万台生産し日米に出荷、日産もメキシコで約66万台を生産して北米に供給するなど、日本から直接輸出する台数を抑える動きがあります
jp.reuters.com。また、北米向け車種の現地生産(モデル現地化)を一層推進し、関税適用を回避する戦略を強めています。米国のインフレ抑制法(IRA)によるEVやバッテリー生産の現地化要請もあり、将来的に電動車の現地生産比率が高まることも予想されます。
サプライチェーン動向: コロナ禍以降続いた半導体不足や物流遅延が2024年には徐々に緩和し、生産台数の回復に寄与しました。各社とも2023年に生産制約で落ち込んだ分を取り戻すように増産に努め、特にSUBARUは需要旺盛なSUVを安定供給することで29か月連続の販売増につなげました
aba-j.or.jp。一方で、日産のようにモデルチェンジサイクルや販売競争力の問題で米国生産を減らしたケースもあります。全体として、需要回復にサプライチェーンの改善が追いつき、生産・販売とも増加基調となった年でした。
総括: 2024年のデータから、各メーカーの米国市場における戦略の違いが浮き彫りになります。ホンダは徹底した現地生産志向で輸出依存度が極めて低く、トヨタも多くを米国・北米で生産しつつ一部高付加価値車種を日本から供給しています。日産とSUBARUは現地生産と輸出が概ね半々で、モデルや生産能力のバランスを取っています。マツダと三菱は輸出比率が非常に高く、現地生産能力の制約が見られます。この違いには各社の歴史や製品ポートフォリオ、資本力の差が反映されています。今後、為替や関税政策の行方次第では、生産体制の見直しが一段と進む可能性があります。例えば関税引き上げが現実となれば、日本から米国への輸出148万台超(2023年実績
jp.reuters.com)の行方に大きな影響を与え、国内生産や雇用にも波及する懸念があります
jp.reuters.com。一方で、北米市場は日系メーカーにとって最大の収益源であり、各社とも米国の需要動向に機敏に対応する姿勢が鮮明です。総じて、2024年は米国市場の回復基調の中で日系メーカーが供給体制を強化しつつ、将来リスクに備えた生産拠点最適化を模索した一年だったといえるでしょう。